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「現実をそのまま受けとめる」

  • 佐々木 優
  • 2023年10月29日
  • 読了時間: 3分

2023年10月29日(日)


テキスト:伝道者の書1:12~18(旧約聖書1,138頁)

 伝道者の書の著者ソロモンは、イスラエル統一王国時代の3番目の王(紀元前971-931年在位)である。彼は、イスラエルの王とされた時、神様から「あなたに何を与えようか。願え。」と尋ねられ、「善悪を判断してあなたの民をさばくために、聞き分ける心をしもべに与えてください。」と願う。この願い事は神様の御心にかない、神様は彼に「知恵と判断の心」とを与えられた(Ⅰ列王記3:5~12)。神様が知恵の心と判断する心をお与えになったが故に、彼の知的優秀さは後代までの語りぐさとなった。神様から知恵と力をいただいたソロモンは、行政と建築に手腕を発揮し、軍を整備し、船団をつくって貿易を盛んにし、イスラエル王国の最盛期をもたらした。

 栄華を極めたソロモンは、人生の色々な問題を知恵によって解決しようとした。

<13節:私は、天の下で行われる一切のことについて、知恵を用いて尋ね、探り出そうと心に決めた。これは、神が人の子らに、従事するようにと与えられた辛い仕事だ。>

「天の下」「日の下」(14節)は地上を指す表現。ソロモンは豊かな知恵を神様から与えられてが、その知恵を用いて地上で行われる一切のことについてその意味を探り出そうと並々ならぬ努力をした。しかし、その努力も「辛い仕事」にすぎず、すべては徒労に終わるのだと述べる(14節)。それでも私たちも、私たちの身に起こることを神学して生きるのである。

<14節:私は、日の下で行われるすべてのわざを見たが、見よ、すべては空しく、風を追うようなものだ。>

「風を追うようなものだ」は「風を追う努力だ」ということを意味し、これも人間の努力のむなしさを述べている。

<15節:曲げられたものを、まっすぐにはできない。欠けているものを、数えることはできない。>

人間社会に存在する「曲げられたもの」を、ましてや神様が曲げていたとしたら、人間の知恵はそれを正すことができず、存在しないものを「数えることはできない」と、人間の知恵の限界を述べる。

<16節:私は自分の心にこう言った。「今や、私は、私より前にエルサレムにいただれよりも、知恵を増し加えた。私の心は多くの知恵と知識を得た。」>

ソロモンの知恵は余りにも有名であった。ソロモンは自分の知恵と知識の豊かさに自信を持っていた。

<17節:私は、知恵と知識を、狂気と愚かさを知ろうと心に決めた。それもまた、風を追うようなものであることを知った。>

ソロモンは「知恵と知識」の対極である「狂気と愚かさ」(「狂気と愚かさ」は2章に示されている快楽主義を意味しているのかもしれない)をも知ろうと努力したが、それも無益であったと述べる。

<18節:実に、知恵が多くなれば悩みも多くなり、知識が増す者には苛立ちも増す>

「知恵が多くなれば」人生の問題点や矛盾が一層よく分かるようになるが、「悩み」と「苛立ち」を増すだけであったと述べる。

 ソロモンは知恵を用いて、目に見える現実を尋ね求めてもそれもむなしかった。

 本日の箇所は、今ある現実をそのまま受けとめることの大切さが述べられているのである。私たちは愛の神様から与えられているもので生きている。

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