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「失敗は怖くないことを思い出したペテロ」

  • 佐々木 優
  • 2023年4月30日
  • 読了時間: 4分

2023年4月30日(日)

テキスト:ヨハネの福音書21:15~17 (新約聖書230頁)

イエス様はペテロに、「ヨハネの子シモン。あなたは、この人たちが愛する以上に、わたしを愛していますか。」(15節)と問いかける。「この人たちが愛する以上に」と言われたのは、以前にペテロが語った言葉を思い出させるためであろう。マタイ:26:31~35にこう記されている。

そのとき、イエスは弟子たちに言われた。「あなたがたはみな、今夜わたしにつまずきます。『わたしは羊飼いを打つ。すると、羊の群れは散らされる』と書いてあるからです。しかしわたしは、よみがえった後、あなたがたより先にガリラヤへ行きます。」

すると、ペテロがイエスに答えた。「たとえ皆があなたにつまずいても、私は決してつまずきません。」イエスは彼に言われた。「まことに、あなたに言います。あなたは今夜、鶏が鳴く前に三度わたしを知らないと言います。」ペテロは言った。「たとえ、あなたと一緒に死ななければならないとしても、あなたを知らないなどとは決して申しません。」弟子たちはみな同じように言った。

ペテロは「たとえ皆があなたにつまずいても、私は決してつまずきません。」と言った。ルカの福音書では、このペテロの言葉が語られる前に、弟子たちの間で誰が一番偉いだろうかという議論が起こっていたとある(ルカ22:24)。イエス様が十字架にかかるためにエルサレムに向かっていく時、弟子たちのほとんどは、イエス様が武力や奇跡の業によってローマの国を打ち破るのではないか、そして、ユダヤの王の位に就くのではないかと考えていたのであろう。そしてその時には、誰が右大臣左大臣に就くのかということが最大の関心事だったのである。「たとえ皆があなたにつまずいても、私は決してつまずきません。」とは、私は腰抜けのような弟子ではありませんという自分のアピールであり、だから私をあなたの右大臣にお願いしますという言葉だったのであろう。

イエス様の「あなたはわたしを愛していますか」との問いかけと、ペテロの「私があなたを愛していることは、あなたがご存じです。」との控え目な応答(3度否んでしまった経験から「はい愛します」と、きっぱりと答えることができない)が3回繰り返される。

ペテロはイエス様に三度問いかけられたことで「心を痛め」たとあるが(17節)、何故イエス様は三度問いかけるという3回という回数によって、三度イエス様を知らないと否認してしまった、できれば忘れてしまいたい過去の出来事をあえて思い出させたのだろうか・・。

ルカ22:31~32にはこう記されている。「シモン、シモン。見なさい。サタンがあなたがたを麦のようにふるいにかけることを願って、聞き届けられました。しかし、わたしはあなたのために、あなたの信仰がなくならないように祈りました。ですから、あなたは立ち直ったら、兄弟たちを力づけてやりなさい。」

イエス様はペテロが三度否認することも、そして、イエス様を3度否認することによって自分に嫌気がさし、傷つき、気落ちするが、しかし、立ち直ることを知っておられた。立ち直ることを知っておられたが故に、ペテロが語った「たとえ皆があなたにつまずいても、私は決してつまずきません。」や、イエス様を知らないと三回否認した出来事を思い出させるようなことをされたとも考えられるが、それでも一見、イエス様が意地の悪い方にも感じられるのではないだろうか・・。しかし、聖書から読み取れるイエス様は、そんな意地の悪いことをされる方ではない。だとすると、ここには、聖書では表現されていないが、三年半余りの師弟関係の中で、弟子が感じ取れるイエス様の表情があったのではないだろうか・・。それは、にこやかな表情だったのではないだろうか・・。

『神さまイメージと恵みの世界』の著者、河村従彦先生はその著書の中でこう述べておられる。「神さまの恵みの世界では、失敗は怖くありません。また、致命的でもありません。赦しは無限です。再チャレンジがいつでもできます。失敗があっても、『それはそれでいいじゃないか。またいっしょにやろうよ』と、何度も何度も声をかけられます。私たちが『少し疲れました』と言えば、『そのままでいいよ。それじゃあ、しばらく立ち止まろう』と言って、いっしょに立ち止まってくださる方です。この恵みの世界の『ゆるゆる感』、なかなかいいものです。」

この時ペテロは、そんな恵みの世界を感じさせて下さっていたイエス様という御方を思い出したのではないでしょうか・・。

そして、イエス様はペテロに、「わたしの子羊を飼いなさい。」「わたしの羊を牧しなさい。」「わたしの羊を飼いなさい。」と、与えられている恵みの働きに帰るように促されたのではないでしょうか・・。

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