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「人の尊厳さえ踏みにじらなければ」

  • 佐々木 優
  • 1月1日
  • 読了時間: 3分

2025年1月1日(水・元日)

テキスト:ヨハネの福音書13:21~27(新約212頁)


 詩篇22:1「わが神わが神どうして私をお見捨てになったのですか。私を救わず遠く離れておられるのですか。私のうめきのことばにもかかわらず。」

 イエスさまはダビデの詩篇が好きだったようで、たくさん口ずさみました。

 ダビデはユダヤの王様の位に就いていた時、複数人の妻とそばめがいました。それは当時の王宮の文化だったからですが、いわゆる私たちが知るモーセの律法の感覚からすると複数のそばめがいることは罪なのではないかと思うのではないでしょうか・・。しかし、神さまはそのことを咎めませんでした。

 出エジプト記20:14「姦淫してはならない。」このことばは、出エジプトを果たしたイスラエルの民に神さまが語ったことばですが、出エジプトを果たす前のイスラエルの民は、人間の尊厳を踏みにじられることが当たり前のような奴隷生活を強いられていました。人としての尊厳を見失っていた民は性欲のコントロールもできなかったのでしょう・・。しかし、出エジプトを果たした民に、神さまが「もうこれからはそのようなことをする必要はないのですよ」というメッセージが「姦淫してはならない」ということばだったのです。その意味は、夫婦関係が破綻するようなことに自分の身を置くことはあなたにとって幸いではないから、そのようなことに自分の身を置くのは安全ではないですよというメッセージでした。

 モーセの律法は、神さまが人間に与えた基準ではなく、愛と信頼を土台として神さまと人間が人格と人格の温かい交わりを築いていくための神さまの自己開示でした(出エジプトを果たす前のイスラエルの民は先祖から伝え聞いてきた創造主の神さまを忘れかけていた)。そして、出エジプトを果たしたが人としての尊厳を失っていたイスラエルの民には、神さまとの交わりによって人としての尊厳をもう一度回復することが何よりも重要だったのです。そのための律法、十のことばだったのです。

 神さまは「姦淫してはならない」をそのままダビデの王宮の文化に当てはめることを意図していなかったのだと思います。故に、ダビデに複数人の妻とそばめがいてもそのことを咎めなかったのだと思います。しかし、ダビデがバテシェバ事件(ダビデはバテ・シェバが水浴しているのを見てしまい、欲求を抑えられずに、彼女を王宮に召し入れて妊娠させてしまい、あげくの果てに、その事実を隠すため、彼女の夫ウリヤを戦場で死ぬように画策し、戦死させ、彼女を奪うという大きな罪を犯した)を起こした時には神さまはダビデを咎めました。それは、その時、ダビデが明らかに人の尊厳を踏みにじったからだと思います。

 神さまは人の尊厳を踏みにじる行為にはストップをかけ、そのことを咎められますが、それ以外のことは、その人が決めることに任せておられるのだと思います(自由意志の尊重)。イエスさまはご自分を裏切ろうとしているイスカリオテ・ユダに「あなたがしようとしていることを、すぐしなさい。」(ヨハネ13:27)と言われました。「あなたが決めていい」と言われたのです。

 神さまは、人の尊厳を踏みにじろうとする行為(イエスさまはご自分の尊厳は踏みにじっても良いとされた)にだけはストップをかけますが、それ以外のことは、あなたが自分で決めていいと言われるのです。それが神さまの世界だからです。

 そのような世界で神さまから頂いた生来の賜物を生かし、喜んで生きている姿を神さまは何よりも喜んでおられるのです。


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