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「人の尊厳を踏みにじる行為だけはやめてほしい」

  • 佐々木 優
  • 2 日前
  • 読了時間: 4分

2025年9月7日(日)

テキスト:ヨナ書3:1~10、4:11(旧約聖書1,579頁)


 神さまがアッシリア王国の首都ニネベをどのように思っておられたのか・・もう一度心に留めたいと思います。

 ヨナ書1:1~2にはこのように記されています。

1:1 アミタイの子ヨナに、次のような主のことばがあった。

1:2 「立ってあの大きな都ニネベに行き、これに向かって叫べ。彼らの悪がわたしの前に上って来たからだ。」

 当時の紀元前700年代頃のニネベはアッシリア王国の首都であり、当時近隣のバビロンをもしのぐ世界最大の大都市と言われました。現在のイラクの中心の町にあたります。当時、アッシリアが征服民に対して行った拷問と虐殺の残忍さは周知され、恐れられていたということですが、このアッシリアという国が道徳的に腐敗し、他国民の尊厳を全く省みることをしない振舞いが神さまの目に余り、それが限界に達した故に、神さまはヨナに異教の民ニネベに暴虐無尽の行為をやめるように訴えてほしいと告げたのです。

 旧約聖書は基本的にはイスラエルの民族史であり、神さまがイスラエルを守るためにどのようなことをして下さったのかが記されています(旧約聖書と新約聖書とでは書かれているスタンスがまったく違う)。ですので、「彼らの悪がわたしの前に上って来たからだ」と言って、アッシリア(ニネベ)の暴虐無尽の行為にストップをかけようとされたのは、イスラエルの民に暴虐無尽の行為が及ばぬようにということがあったのでしょう。

 ヘンリー・H・ハーレイによると、「ヨナは預言者であると共に有名な政治家であった」ということですが、そうだとすると、ヨナは政治家としてイスラエルの代表として、「あと四十日すると、ニネベは滅びる。」とニネベの街を一日中歩き回って叫んだのでしょう(ヨナ3:4)

 この宣言を聞いたニネベの人々が神を信じ、断食を呼びかけ、身分の高い者から低い者まで粗布をまとうという徹底的に悪の道と横暴な行いから立ち返ったのは、神さまの働きかけがあったとしか考えられないと思います(歴史には、実際に、アッシリアの征服が一時中止されたということが残っています)。

 ヨナは「神は彼らの行いを、すなわち、彼らが悪の道から立ち返ったのをご覧になった。そして神は彼らに下すと言ったわざわいを思い直し、それを行われなかった。」(3:10)と、彼らが悪の道から立ち返ったから、神さまが彼らに下すと言ったわざわいを思い直し、それを行われなかったと述べていますが、ヨナ4:11を見ますと、神さまが暴虐無尽の行為をしているニネベに対してもこのような思いを持っていたということが分かります。

4:11 ましてわたしは、この大きな都ニネベを惜しまないでいられるだろうか。そこには、右も左も分からない十二万人以上の人間と、数多くの家畜がいるではないか。

 しかし、この約150年後、アッシリアは再び暴虐無尽の行為に戻り、滅んでいったということです。

 このようなことから何が分かるだろうか・・

〇神さまは愛する者を救うために黙っておられる方ではない

神さまは私たちに見えないところで豊かに働いておられる。私たちが不条理だと思えることをそのまま放っておかれる方ではない。時に、その神さまの姿が見えることもある。

〇神さまは人の尊厳を踏みにじる行為にはストップをかける

出エジプト記20章に出て来る「十のことば」は、人間の尊厳を毀損してはならないということがテーマになっています。

20:8 安息日を覚えて、これを聖なるものとせよ

人の尊厳など全く顧みられることのなかった奴隷生活を強いられていたイスラエルの民に曜日の感覚を取り戻し、人間の尊厳を回復していこうと言われた。

20:13 殺してはならない。

人を殺さなければ生きていけないような過酷な奴隷生活から解放された。もうそのようなことはしなくてもいい。人の尊厳を壊さなくてもいい。

20:14 姦淫してはならない。

20:15 盗んではならない。

人の尊厳を壊すようなことをしなければ生きて行けないような生活はもう終わった。これからは人間の尊厳を回復していこう。

神さまは何よりも人の尊厳を大切にされ、それを踏みにじる行為をやめない時には、張り裂けるような思いの中で(「大きな都ニネベを惜しまないでいられるだろうか」)「滅びる」と言われることがある。

 

 


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